[セミナー]第36回IPB セミナー

[セミナー]第36回IPB セミナーを下記の通り開催します。
日時:2023年6月6日(火)13:00-14:30 理研神戸キャンパス Hybrid開催 
講演者: 中山洋平氏(東北大学)
タイトル:生体分子モーターF1-ATPaseの「効率」の良さと酵素反応速度論
※登録リンク↓
https://riken-jp.zoom.us/meeting/register/tJckdumpqTkoHNCTGCAIVZ2Jj9XTXJkr27zB

アブスト:
生体分子モーターのひとつであるF1-ATPaseは、さまざまな点で効率が良いことが知られている。しかし、そのうちの一つである、ATP加水分解の自由エネルギーを回転運動の自由度にすべて集中させる、という性質については、どのような意味があるのか議論がありはっきりとした結論は得られていない。
私たちは酵素反応速度論、すなわち、反応速度の基質濃度に対する依存性に着目して、F1-ATPaseがATPを合成している場合と分解している場合の酵素反応速度論を一分子実験によって調べた。その結果、ATPを分解している場合は単純なMichaelis-Mentenの式に従うのに対して、ATPを合成している場合には、Michaelis-Mentenの式よりも穏やかな基質濃度依存性を示すことが明らかになった。
そして、ATP加水分解の自由エネルギーが回転運動の自由度に集中することを説明するモデルであるTASAMによって今回の実験結果が再現できること、またATP合成と分解の酵素反応速度論の違いがTASAMの特徴である非対称なアロステリック性に由来することが数値計算によって分かった。
F1-ATPaseの生体内での役割はATP合成であるので、ATP合成速度の基質濃度依存性が小さいことが望ましいと考えると、ATP加水分解の自由エネルギーが回転運動の自由度に集中する、という効率の良さは、基質濃度依存性を小さくした結果として付随的に生じたものであるのかもしれない。